見学お断りだべ! //オマケ//









「……あーあ」
パタンと小気味良い音をたてて閉じた扉を目にして、嘆息する。
「あと一秒待てなかったのかよ。バレたろあれ!」
「あァ」
「その『あァ』はどっちの肯定だ、待てなかったかそれともバレた方か」
「どっちもだ」
肩に丸い重みがかかる、顎を肩に乗せて喋られるとそこから震えが伝わる。
ふてぶてしい声音が続ける。
「てめェが声かけたりしなきゃ振り向かなかったろ。こっちは待ってるってのに涼しいツラでちんたら他人に話しかけやがって」
「バカ、あぁ言っとかねェと後で来たら困るだろが」
な?
語尾に含みを持たせて首をかしげ、傍にある頭にコツンと軽くぶつけてやるが、不満そうな空気は消えない。
「あんなバリアでお前の周りを遮られるのはどうもむかっ腹が立つ」
「うん、ちょっと落ち着け」
デカイ図体で不貞腐れられてもちっとも可愛くない。
だけどそのセリフはちょっとカワイイかも……なんて思ったのはナイショだ。
物理的な壁を作られて焦燥に駆られた? とか? なかなかカワイイヤツじゃんか、うひひ。
「お前がバリアの代わりしてくれるんだろ?」
「おぅ、しっかり囲っといてやる」
「違ェよ、邪魔する奴、主にルフィを撃退すんのが使命だろが。んでとりあえず少し離れねェ?」
「嫌だ」
取り付く島もない。ふたたび嘆息をこぼす。
おれの首の付け根にぐりぐりと額を押しつけるさまはデカイ子供そのものだ。もーちょっと左、とか言いたくなる良い感じの丸みと刺激でもある、別に肩は凝ってないけど。
「だからお前には任せられねェっつーんだ、邪魔者一号はてめェじゃねェか」
「安心しろ、邪魔者は排除する」
「お前の邪魔者枠には自分は入らねェのか」
今おれは不寝番の夜食を作ってる最中なんだが。後ろからのっかられてると動きにくくて現在進行形で邪魔なんだが。
とはいえ完全に動きが封じられているわけでもないので、もう諦めてそのままにさせておいた。


今日の不寝番はウソップ。
ウソップは昨夜何やら作っててあまり寝てないらしく、連続の睡眠不足はさぞ眠かろうってんで、飲み物はコーヒー、だけど胃を悪くしないようにミルク多めにしたカフェオレで。
カフェオレを筒型のポッドに注いで、バスケットに入れると夜食セットの完成だ。
ひょいと持ち上げてダイニングの扉に向かうと、背中にひっついたままクソ剣士もついてきた。

外に出ると、夜も更けた甲板はしんと静まりかえっていた。人っ子ひとりいない。
と、思った時、向かい側の階段近くで一つの人影が動いた。
(あらら)
なんとも間の悪いことに。
先刻ダイニングから追い出した(というと人聞きが悪いが)バリアの能力者が、そこにいた。
階段の側から出てきたところを見るとおおかたトイレにでも行ってたんだろう。
夜目にも間違えようのない派手なナリがおれ達に気づく。
瞬間、冷凍されたみてェにビキっと固まったかと思うと、寸暇をおいて「すんませんんん!」と叫び、慌てて部屋にひっこんでしまった。

(やれやれ……)

未だ背後からべったりひっついているデカイ図体の頭を上からぐいと手で押す。
「おい妖怪。展望室に上る時くらいは離れろよ」
「誰が妖怪だ」
「妖怪おんぶおばけ」
言った後で、おぉぴったりじゃんか、と思う。
昔話で聞いたことがある、夜になると勝手に背中に乗っかってくるという妖怪、おんぶおばけ。
確か、そいつの重さに最後まで耐えきれれば良いことがある、って話だったような。
(良いこと、ね……)
このおんぶおばけの重さに耐えれば、その後に待ってるのは。

良いことというか―――イイことと、いうか。

(………ッて、アホかぁあぁ!)

脳裏に浮かんだ言葉の意味合いに1人で恥ずかしくなっちまって脳内で絶叫。
そこに、背後のおんぶおばけが、言い返す代わりに無言でさらにべったり体を寄せてきたもんだからたまったもんじゃない。全身の血の巡りが走り出すのを、抑えられなくて。
ううまずいフォアマストにたどり着くまでどうかおんぶおばけに気づかれませんように!
と、念じながら唸りながら、小走りするはめになった。














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オマケはサンジ視点。
一見そうは見えないけど、実は誰も入れないイチャイチャかっぷるー。

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